Insights · · AIの使い方
宅建に合格したら、不動産の仕事で AI をどう使うか
無料で使える範囲と、やってはいけないこと(2026年10月18日時点)
結論: 合格後の不動産実務での AI は、「下調べ・要約・文案の下書き・確認項目の洗い出し」に使います。事実の確定、お客様への説明、書面への記名、広告を出してよいかの最終判断は、人(宅地建物取引士)が行います。個人情報や取引先の秘密は、勤務先が認めたサービスと設定でなければ入力しません。
この記事は、宅建試験を受けた方(結果は11月25日9時30分の合格発表で分かります)と、すでに不動産会社で働いている方に向けています。条文と公的機関の文書を確認できた範囲だけを書き、確認できなかったことは「確認できませんでした」と書いています。
執筆・編集:合同会社 My Agent Works(東京都小平市)。確認日は2026年10月18日です。
合格後、不動産の仕事で AI を使うなら、何から始めるのがよいか?
間違えても外に出る前に人が直せる作業から始めます。具体的には、資料の要約、確認項目の一覧づくり、文章の下書きです。
| 場面 | AI にさせてよいこと(例) | AI にさせないこと | 確認する先 |
|---|---|---|---|
| 物件資料の整理 | 手元の資料に書いてある内容を、項目ごとの表に並べ直す | 資料に書いていない項目を推測で埋めさせる | 元の資料そのもの |
| 重要事項説明の下調べ | 説明する項目の抜け漏れチェック表を作る、調べる順番を整理する | 法令上の制限などの数値や結論を、AI の答えのまま書類に写す | 法令の条文、登記事項証明書、自治体・事業者の窓口 |
| お客様への説明文 | 専門用語をやさしい言葉に言い換えた下書きを作る | 事実や条件を AI に補わせる、結果を断定する文面にする | 社内の確認、案件の記録 |
| 広告表示のチェック | 「この表現は事実と違っていないか」を点検する観点を挙げさせる | 出してよいかの最終判断を任せる | 宅建業法32条などの規定、社内の広告責任者 |
どの場面でも共通するのは、AI の答えは「確認の出発点」で、「根拠」ではないという点です。個人情報保護委員会も、生成AIの応答結果には不正確な内容が含まれることがあると注意を呼びかけています(令和5年6月2日、S4)。
合格しただけで、重要事項説明はできるのか?
できません。重要事項説明をするのは「宅地建物取引士」で、宅建業法は、宅建士証の交付を受けた者をこう呼びます(2条4号)。
合格のあと、次の順に進みます。
- 試験を行った都道府県知事の登録を受ける(18条)。登録には、2年以上の実務経験、または登録実務講習の修了などが必要です(施行規則13条の15・13条の16)。
- 登録している都道府県知事に、宅建士証の交付を申請する(22条の2)。合格した日から1年以内に宅建士証の交付を受けない場合は、法定講習が必要です(同条2項ただし書)。
重要事項説明は、契約が成立するまでの間に、宅建士が、書面を交付して行います。宅建士は説明のときに宅建士証を相手方に提示し、書面に記名します(35条1項・4項・5項)。AI が下調べを手伝っても、この役割は人が負います。手続の詳しい流れは、宅建の合格発表(11月25日)までに、やっておくことは何かにまとめました。
物件資料の整理に AI を使うときの注意は?
「資料に書いてあることだけを使う」と指示し、出力は毎回、原本と突き合わせます。そして、入力する前に、その資料に個人情報や秘密が入っていないかを確認します。
使い方の例(架空の指示文です):
次の文章は物件の概要です(所有者名・住所・連絡先は伏せてあります)。書かれている内容だけを使って、項目ごとの表にしてください。書かれていない項目は「記載なし」と書き、推測で埋めないでください。
ポイントは3つです。
- 資料にない項目を「記載なし」と書かせる。AI の応答には不正確な内容が含まれることがあるため(S4)、空欄を推測で埋めさせないようにします。
- 表にした結果は、原本の数字・名称と1項目ずつ照合する。
- 所有者名、売主・買主の氏名、連絡先、住所の番地などは、入れる前に伏せる。
重要事項説明の下調べに AI を使ってよいか?
「何を調べるか」を整理する用途なら使えます。「調べた結果」を AI の答えで済ませてはいけません。
宅建業法35条1項は、重要事項として、登記された権利の種類や内容、法令に基づく制限の概要、私道に関する負担、飲用水・電気・ガスの供給や排水のための施設の整備の状況、契約の解除に関する事項、損害賠償額の予定または違約金に関する事項などを挙げています(S1)。
使ってよい例:
- 「重要事項として説明する項目の抜け漏れチェック表を、案件の種類(売買・賃貸)ごとに作って」と頼み、出てきた表を35条の条文と見比べて直す
- 調べる先(登記、法令、自治体、各事業者)ごとに、確認すべきことを整理させる
やってはいけない例:
- 用途地域や制限の内容を AI に聞き、答えをそのまま説明書面に書く
- 説明の原稿を AI に作らせ、宅建士が内容を確認しないまま読み上げる
宅建業法47条1号は、契約の締結について勧誘をするに際し、35条1項各号の事項や、相手方の判断に重要な影響を及ぼす取引条件などについて、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為を禁じています(S1)。条文は「故意に」と定めているため、AI の誤りがそのまま同条の違反になるとは限りません。ただし、AI の答えを確かめないまま説明すると、誤った説明につながります。実務上の注意として、確かめていない内容は説明に使わないでください。
なお、AI を使ってよいかどうかを直接定めた宅建業法の条文は、今回調べた範囲では確認できませんでした。勤務先の規程がある場合は、それに従ってください。
お客様への説明文の下書きは AI に任せられるか?
言い換えや構成づくりの下書きには向いています。条件や事実を足したり、結果を約束する文面にしたりしてはいけません。
使い方の例(架空の指示文です):
次の説明文を、不動産に詳しくない方にも読みやすい言葉に言い換えてください。内容は変えず、新しい情報や条件を足さないでください。「必ず」「確実に」など断定する言い方は使わないでください。
宅建業法47条の2第1項は、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断の提供を禁じています(S1)。出てきた文面に断定表現が含まれていないかを、人が確認します。
広告表示のチェックに AI は使えるか?
「点検の観点を挙げさせる」「社内の確認表の案を作る」用途には使えます。出してよい広告かどうかの判断は、人が条文と社内ルールで行います。
押さえておく規定は次のとおりです。
- 宅建業法32条: 広告で、所在・規模・形質・環境・交通・代金などについて、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示をしてはならない(S1)
- 宅建業法34条1項: 売買・交換・貸借の広告では、取引態様(自分が当事者か、代理か、媒介か)を明示する(S1)
- おとり広告: 国土交通省不動産業課の通知は、売る意思のない物件の広告や実在しない物件の虚偽広告が宅建業法32条で禁止されていること、成約済みの物件を速やかに広告から削除せず掲載し続けることが「おとり広告」にあたること、他の物件情報をもとに賃料・価格・面積・間取りを改ざんして実在しない物件を広告することが「虚偽広告」にあたることを示しています(令和5年1月12日、S5)。「不動産の表示に関する公正競争規約」21条にも同様の規定があります。
AI に条件を指定せずに広告文を作らせると、入力した事実にない表現が入る可能性があります。そこで、指示には「入力した事実以外の表現を足さない」と条件をつけ、できた文面は物件の情報と1項目ずつ突き合わせます。
AI に入れてはいけない情報は何か?
お客様や取引相手の個人情報と、業務で知った秘密です。勤務先がそのサービスの利用を認め、入力した内容の扱いを確認できている場合を除き、入力しません。
根拠は2つあります。
- 宅建業法45条は、宅建業者が正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らすことを禁じ、75条の3は、従業者にも同じ義務を課しています。業を離れた後も同様です(S1)。
- 個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを生成AIサービスに入力し、その個人データが応答の出力以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法に違反することとなる可能性があるとしています。入力する場合は、サービス提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないことなどを十分に確認するよう求めています(S4)。
入れる前の確認リスト:
- 氏名、電話番号、メールアドレス、住所の番地、勤務先、年収・借入の情報が入っていないか
- 契約書や重要事項説明書の画像・PDFを、そのまま読み込ませようとしていないか
- そのサービスの利用規約とプライバシーポリシーで、入力内容が学習などに使われるかを確認したか
- 勤務先のルールで、その利用が認められているか
無料で使える AI は、どこまで業務に使えるか?
個人情報や秘密を含まない作業であれば、無料のサービスでも試せます。ただし、無料で使えるかどうか、上限、入力内容の扱いは提供元ごとに違い、変わることもあるため、使う日に利用規約と設定画面を確認してください。
この記事では特定のサービス名や無料枠の内容は挙げません。確認できていないことを書かないためです。無料の範囲で試すときは、次のように進めると安全です。
- 個人情報を含まない、架空の物件情報で試す
- 出てきた答えを、条文や公的な資料で確認する習慣をつける
- 実際の案件で使いたくなったら、勤務先に使ってよいサービスと入力してよい情報の範囲を確認する
有料のサービスを使うかどうかは、この記事では扱いません。
合格発表(11月25日)までに、AI の使い方で準備できることは?
架空の物件で練習すること、そして「AI の答えを何と照合するか」を決めておくことです。
令和8年度宅建試験の合格発表は11月25日(水)9時30分です(S3)。それまでにできる準備:
- 試験範囲で学んだ条文(35条、32条、34条、45条など)を、確認先として手元にそろえる
- 架空の物件資料で、「資料の整理」「抜け漏れチェック表づくり」「言い換えの下書き」を試し、AI が間違えやすいところを自分で見つける
- 勤務先に、AI の利用ルールがあるかを聞いておく
登録や宅建士証の交付の手続で、発表までに確認しておくことは、宅建の合格発表(11月25日)までに、やっておくことは何かにまとめています。
よくある質問
AI が作った重要事項説明書をそのまま使ってもよいですか?
使えません。重要事項説明は、宅建士が、書面を交付して説明し、宅建士証を提示し、書面に記名して行うものです(35条)。AI の出力は下調べの材料にとどめ、内容は条文・登記・自治体などで確認してください。
お客様の名前を伏せれば、契約書を AI に読み込ませてもよいですか?
氏名を伏せただけでは足りない場合があります。住所、物件の所在、金額、連絡先などの組み合わせで個人が分かることがあります。個人データを入力する場合の注意は個人情報保護委員会が示しており(S4)、勤務先の規程がある場合はそれに従ってください。迷うときは入力しないのが安全です。
宅建に合格したばかりでも、AI を使って実務の勉強はできますか?
できます。個人情報を含まない架空の資料で、条文の確認項目を表にする、用語を言い換える、といった使い方は練習になります。ただし、AI の答えが条文と合っているかは、自分で条文を読んで確かめてください。
広告文を AI に作らせるときに、特に気をつけることは何ですか?
入力した事実以外の表現を足させないことです。広告は宅建業法32条により、事実と著しく違う表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示が禁じられています(S1)。できた文面は、物件の情報と1項目ずつ突き合わせてください。
宅建に合格すれば、すぐ重要事項説明を担当できますか?
できません。登録を受け、宅建士証の交付を受けて「宅地建物取引士」になる必要があります(2条4号・18条・22条の2)。手順は宅建の合格発表(11月25日)までに、やっておくことは何かにまとめています。
この記事の前提と出典
- 確認日: 2026年10月18日。条文は e-Gov 法令検索の宅地建物取引業法と同施行規則を取得して確認しました。
- この記事は一般的な情報で、個別の案件についての法律上の助言ではありません。実際の判断は、勤務先の規程、所属する会社の宅建業法上の責任者、専門家に確認してください。
- AI の出力の正確さや、業務の効率が上がることは保証できません。
- 出典の一覧は、記事末尾の「出典」を参照してください。
出典
運営者について
この記事を公開している合同会社 My Agent Works(東京都小平市、法人番号8012703003584)は、不動産実務を支援する My Agent Series、AI検索での見え方を診断する My Agent Research(MAR)を運営し、宅建BOOST(販売:一般社団法人 職能研修会/企画・開発・保守:合同会社 My Agent Works)の企画・開発・保守を担当しています。国土交通省の登録実務講習実施機関の一覧(S6)には、一般社団法人 職能研修会が、登録実務講習の実施機関の一つ(登録番号13)として掲載されています。この記事は特定の機関を勧めるものではありません。公式サイトは https://my-agent.work/ 、会社情報は https://my-agent.work/about/ です。
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